インプラントの寿命と長持ちの秘訣COLUMN

インプラントの寿命と長持ちの秘訣

2019年07月16日

監修医師:
歯科医師 歯学博士 山田知里

「インプラント治療を受ければ、自分の歯と同様の歯を復元できる」

「もう一度、以前のように好きなものを噛み締められ、見た目も若返る」

そのような期待をして治療にお越しになる患者様も大勢いらっしゃいます。

では、インプラントはどれくらいの期間の寿命を保つことができるのでしょうか。

また、インプラントをできるだけ長くご利用いただける秘訣についてもお話したいと思います。

インプラントの寿命とは?

インプラントの歴史は、「チタンという金属を骨の中に埋めると骨と結合する」という現象が発見されたところから始まりました。

歯が失われた患者様に対して、あごの骨にチタン製の歯根(インプラント体)を埋入すると、インプラントと骨がしっかり結合して歯槽骨の代用になることがわかったのです。ここからインプラントの研究が始まり、今日のように安心・安全なインプラント治療を受けていただけるようになりました。

いったん骨と結合したチタンは数十年にわたってその機能を保ち続けます。また、インプラント体の上に被せる義歯の部分はセラミック製です。セラミックも非常に長期間にわたって変質しにくく、人体に有害性のない素材として知られています。

このため、インプラント治療がうまくいけばインプラントは「一生もの」の歯として、ご自分の歯と同様に寿命を保ち続けるでしょう。

インプラントの寿命を縮める要因とは

インプラント治療を受けたあとの残存率(インプラントが問題なく使用し続けられる確率)は、術後10

にのぼります。これはブリッジや入れ歯などに比べても非常に高い数字で、通常の生活をしている限り、インプラント自体の寿命についてはあまり心配しなくてもいいということでしょう。

ただし、インプラント自体は大丈夫でも、インプラントの周囲の歯茎やほかの歯、あごの骨などに問題が生じれば再手術など何らかの治療が必要となります。これも一種の「インプラントの寿命」といえるでしょう。たとえば歯周病やインプラントの周辺の虫歯などが間接的にインプラントの寿命を縮める要因となります。

インプラントの寿命が尽きたらどうすればいい?

たとえば、インプラントの隣の歯が歯周病になり、抜歯したとします。その傷口がきれいに治癒すれば問題はないのですが、そこから菌が侵入してインプラントの周囲にまで感染が広がったりすると、インプラントをそのままにはしておけません。いったんインプラント体を摘出して治療をおこない、しばらく期間を置いて患部が安定してからインプラント体を埋入するといった再手術が必要となります。

また、インプラントとほかの自然歯との噛み合わせが悪く、ほかの歯が負けて歯茎が弱ってしまったり、逆にインプラント体を埋入した周辺の骨が弱ってしまったりするケースもあります。

多くの場合は、上記と同じくいったんインプラント体を摘出し、期間を置いてから再手術といった流れで歯を再建できるでしょう

なお、インプラントの再手術が適切でない場合や、患者様のご希望で「別の治療法にしたい」という申し出があった場合などはブリッジなどほかの治療に切り替えることも可能です。

前歯と奥歯のインプラントの違い

ぐっと歯を食いしばるとき、主に奥歯に力を込めますか? それとも前歯でしょうか。

前歯に力を込めるという方はあまりいらっしゃらないと思います。

歯の構造を見ても、前歯は上の歯と下の歯を擦り合わせてハサミのように食べ物を噛み切りますが、奥歯は上の歯と下の歯がしっかり合わさって、食べ物をすりつぶすように機能するようになっています。

このため、奥歯のインプラントは垂直方向に強い力が加わっても耐えられるよう、前歯よりも太く長いインプラント体を埋入し、骨と接合する面積を広くする必要があります。

これに対し、前歯のインプラントは他人の目に触れやすい部位であることから、歯の機能とは別に審美的な意味での重要性や耐久性も考えなくてはなりません。

このように、同じインプラントでも治療する部位の違いによって施術に違いがあり、それを考慮したうえで治療をすすめることがインプラントの寿命を延ばすうえで重要になってきます。

インプラントに必要なケアやメンテナンスとは?

上記で説明したように、インプラント自体は非常に頑丈で長年使用しても劣化などは生じにくいのですが、だからといって「ケアやメンテナンスは必要ない」というわけではありません。

人間の体にとってインプラントは「異物」であることには違いないのですから、その接合部には特に慎重な配慮が必要でしょう。

自分でできる日常的なケアとしては、自然歯と同じように歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどを使ってていねいに磨き、できるだけ歯垢を残さないように心がけてください。

また、セルフケアでは取り切れない歯垢や歯石については、従来「歯石取り」などと呼ばれた「歯のクリーニング」がおすすめです。

これはインプラントの寿命を延ばすだけでなく、現在ある自然歯の歯周病予防や口元の若返り効果も期待できますから、定期的にクリニックに通って施術を受けてはいかがでしょうか。

【まとめ】インプラントも自分の歯と同じように大切に。

インプラントはチタンおよびセラミック製であり、インプラント自体の寿命は大変長いのですが、その周辺の歯茎やほかの歯のトラブルによってインプラントの寿命が縮んでしまうことはあります。

そういう際はいったんインプラントを抜いて治療してから再手術するか、ブリッジなどほかの治療法に切り替えることも可能でしょう。

そして、何よりも大事なポイントは、インプラントも自分の歯(自然歯)と同様、長い寿命を保つためには日々のケアや定期的なメンテナンスが欠かせないということです。

どうか、インプラントも含めてご自分の歯を末永く大切になさってください。

公開日:2019.07.16 更新日:2024.01.30
この記事の監修医師:
恵比寿山田歯科医院
歯科医師 歯学博士 山田知里

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