歯を失った時の3つの治療法COLUMN

歯を失った時の3つの治療法

2018年09月16日

監修医師:
歯科医師 歯学博士 山田知里

歯を失うことは、見た目が悪いだけでなく、身体的にも精神的にも様々な影響を及ぼします。

人間の体は失ったものを補おうとする力が働きますが、残念ながら失った歯は元には戻りません。それどころか、失った歯の両隣の歯(隣在歯)やもともと噛み合っていた歯(対合歯)に悪影響を及ぼしてしまいます。

歯を失ったら、そのままにせずに適切な治療を受ける必要があります。

歯がない状態のまま放置するとどうなるの?

歯を失うことは様々な影響を及ぼします。歯がないまま放置するとどうなるのでしょうか。

特に前歯を失った場合、見た目が大きく変わり、人に与える印象にも大きな影響を与えます。残念ながら清潔なイメージとはかけ離れてしまいます。また、空気が漏れるため言葉をうまく発音できず話しづらくなり、人との会話をためらったり、思いっきり笑えなかったりなど生活面でも支障をきたします。また年齢的にも老けて見られることもあります。

失った歯が奥歯の場合、パッと見では人に気づかれることはあまりありませんが、歯を失うことによって歯が移動し、歯並びが変わってしまう場合があります。それにより噛み合わせがずれてしまい、正常な噛み合わせのバランスが保てなくなります。一度ずれた噛み合わせは簡単には戻りません。また片方だけ噛んでいると、長い間に顔の形も変形していく場合もあります。

歯を失った部分の骨が痩せていき、顔の輪郭が変わってしまうことにもつながります。そして何よりも歯を失うことにより、食べたいものを美味しく食べることができません。

食べ物は噛むことで美味しさを引き出します。イカ、タコなど歯ごたえを楽しむ食べ物、ピザやトーストなど前歯で噛み切る必要がある食べ物、焼肉など奥歯で噛んで美味しさを感じる食べ物など、美味しい食事に歯は必要不可欠です。食事が美味しく出来ないことでストレスがたまります。またよく噛めないまま飲み込む事により、消化不良など胃腸障害を引き起こします。

歯がない状態のまま放置することは、審美的なことだけではなく、心身共に様々な影響を及ぼします。歯を失ったまま放置しないで、治療をすることが大切です。

歯を失った場合の治療方法

歯を失った場合の治療方法には3つの方法があります。

具体的にはインプラント、ブリッジ、入れ歯があります。それぞれにはメリットとデメリットがあります。

インプラントのメリット、デメリットと適応例

インプラントのメリット、デメリットと適応例

インプラントとは、チタン製の人工の歯根をあごの骨に埋め込み、それを土台にして人工の歯を装着する治療方法です。

インプラントのメリット

  • 自分の歯に限りなく近く、同じように食事ができ、自分の歯に近い見た目にすることができるため、自然に見えます。
  • 入れ歯では食べにくいようなものも、違和感なく通常の歯に限りなく近い噛み心地を味わうことができます。食べ物の味や感触がよくわかるようになります。
  • 隣接する歯を削らないので、ほかの健康な歯を傷つける必要もありません。
  • 見た目の美しさだけでなく、機能的にも優れた最新の治療法です。
  • 顎の骨がやせるのも防いでくれます。

インプラントのデメリット

  • 歯を抜くのと同じ程度の手術が必要なことです。恐怖心から躊躇される方もいらっしゃると思います。その場合、局所麻酔と静脈内鎮静法の併用により手術中の負担を軽減し、恐怖感も不安もなくインプラント手術を終えることができます。
  • 全身疾患がある場合はまれに治療が出来ない場合もあります。
  • 骨とインプラントが結合する時間として3ヶ月ほどかかるので、その間は仮歯などで過ごす必要があります。
  • 保険診療ではできない治療法です。

インプラントの適応症

  • 歯が全くない総入れ歯の方
  • 歯が一部ない部分入れ歯の方
  • 失った歯の両隣の歯が全く問題のない健康な歯である方
  • 下の入れ歯が安定しないで痛みが出ている、食事がしにくいなど入れ歯で不具合が出ている方
  • 仕事の関係や性格的、心理的に入れ歯が嫌いな方
  • 入れ歯で発音や発声に不便を感じる方

ブリッジのメリット、デメリットと適応例

ブリッジのメリット、デメリットと適応例

ブリッジによる治療は、失ってしまった歯の両隣の歯を削り、その両隣の歯を支柱にして、
橋をかけるように被せ物を装着する治療法です。このブリッジは固定式になりますので、取り外したり、装置を洗ったりする手間はかかりません。

ブリッジのメリット

  • 手術の必要がありません。
  • 治療期間が比較的短くすみます。
  • 保険が適用になるものもあります。
  • 取り外しの煩わしさがありません。

ブリッジのデメリット

  • 支えている両隣の2本の歯にも負担がかかります。
  • 支える歯の周囲を削って被せ物をするので、健康な歯まで削る必要があります。
  • 土台となる歯の虫歯リスクも高まります。また歯が抜けた部分の骨が痩せていく場合があります。

ブリッジの適応症

失った歯の本数が1本か2本の方。これより多い欠損では失った歯の両隣の歯にかける負担が、過重になり長持ちすることが難しくなってきます。

  • 手術が難しい方
  • 保険診療で行いたい方
  • 治療期間を短く済ませたい方

入れ歯のメリット、デメリットと適応例

入れ歯のメリット、デメリットと適応例

入れ歯は、一般的な治療方法で、以前から広く用いられてきた治療方法です。

入れ歯のメリット

  • 取り外して清掃することができますので、清掃性が高いです。
  • 保険が適用になるものもあります。
  • 治療期間が短くすみます。

入れ歯のデメリット

  • 部分入れ歯の場合、バネで両隣の歯に止めるため不安定で、噛む力は弱くなり、硬いものが噛めなくなります。
  • 入れ歯を入れた時に異物感があり、慣れるまでに時間がかかる方もいます。
  • 歯にかけるバネの部分が、笑うと見えてしまうこともあり、見た目も美しいとは言えません。
  • 発音がしにくくなったり、食事が美味しく感じられなかったりします。
  • 歯が抜けた部分の骨が痩せていく場合があります。

入れ歯の適応症

  • 手術が難しい方
  • 保険診療で行いたい方
  • 治療期間を短く済ませたい方

【まとめ】歯を失った時の3つの治療法

歯を失った場合の治療法として、インプラント、ブリッジ、入れ歯がありますが、どの方法もメリットとデメリットがあり、どの治療法が絶対だという事はありません。

患者様のライフスタイルや求めるものによって最適な治療方法は異なります。一番大切なことは歯を失ったままの状態を放置するのではなく、適切な治療を受け、残っている歯をこれ以上失わないように守ることです。

公開日:2018.09.16 更新日:2024.01.30
この記事の監修医師:
恵比寿山田歯科医院
歯科医師 歯学博士 山田知里

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